あるリスナーから手紙が届きました。PureDSD Batcher で一括抽出した DSF は、**各曲の始まりと終わりで大きな「ポン」**がする。同じディスクを Pine Player Pro、あるいは SACD Ripper GUI で DSF no-pad を入れて取り出すと、その音は出ない、とのことでした。
ファイルと再生経路を突き合わせました。先に結論です。
音は壊れていません。 DSF の規格どおり、曲の末尾にごく短い空白が埋められています。その空白まで DSD として再生するプレーヤーではクリックになります。本当の音楽の長さで止めるプレーヤーでは、同じファイルでも端は静かです。
だから「埋めをやめる」を既定にはしません。全員のファイル形を、一部のプレーヤーに合わせて変えてしまうからです。正しいのは、既定は規格どおり、クリックする再生系向けに DSF no-pad オプションを足すことです。
🛠 何が起きているか
DSF は、各曲のデータが決まった大きさのブロックで終わることを求めます。最後のブロックが音楽だけで埋まらないことが多く、足りない分は空白で埋めます。
ファイルには「本物の音楽がどこまでか」も書いてあります。その長さを守るソフトは、埋めを鳴らしません。一方、最後のブロックごと DAC に渡すプレーヤーやギャップレス実装は少なくありません。DSD の空白は無音ではなく、ビット列の跳びなので、ポンと聞こえます。
すべての機器・すべての盤で起きるわけではありません。有効長で切るソフト再生は平気なことが多く、ギャップレスやブロックごと送る DAC のほうが当たりやすい。リスナーが同じ再生環境で Batcher と no-pad ツールを比べた差は、ここに重なります。
📊 no-pad でファイルの何が変わるか
no-pad はプレーヤーへ「空白を飛ばせ」と伝える命令ではありません。ディスク上の中身を変えます。ブロックを埋められない残り(およそ 12 ミリ秒)を、この曲の末尾に残さず、次の曲の先頭へ移します。
1 曲目は本物の音楽だけでブロック境界に終わります。ナイーブなプレーヤーがクリックする空白が、ほぼ残りません。

| 音楽の長さで止めるプレーヤー | 最後のブロックを全部鳴らすプレーヤー | |
|---|---|---|
| 通常抽出(規格どおりの埋め) | 問題なし | 空白を再生 → クリック |
| DSF no-pad | 問題なし(境目が十数 ms ずれる) | 空白がない → 多くの場合クリックしない |
代償もはっきりしています。
- 2 曲目だけ単独再生すると、冒頭に 1 曲目のごく短い尻尾が乗ることがある。
- 1 曲目だけだと、終わりがその分だけ短い。
- アルバム通しでは、むしろ滑らかなことが多い。
- 最後の曲はまだ埋める必要がある(次曲が無い)。アルバム末尾で残るクリックもあり得る。
no-pad は敏感な再生系向けの互換のための回避です。抽出器が音楽を壊した証拠ではありません。
既定を変えず、オプションにする理由
規格は最後のブロックを埋めるよう求めています。全員の埋めを切ると、問題のなかった人のライブラリまで形が変わります。
クリックしないプレーヤーはたくさんあります。その人たちは、ジャケットの時間やトラック分割と一致する、予測可能な DSF を望んでいます。no-pad を既定にすると、困っていない人のファイルまで変えてしまいます。
役割分担は単純です。
- 既定:規格どおり抽出。 多くの GUI ツールと同じ。
- DSF no-pad オン: 十数 ms を次曲へ移し、空白を音として鳴らすプレーヤーを避ける。
チャンネル選択と同じ判断です。多数派を動かさず、本当に痛いところだけスイッチにする。バグ扱いで既定をひっくり返すことはしません。
✅ これからやること
- [x] 現行抽出が DSF 規格どおり最後のブロックを埋めていることを確認
- [x] Pine Player / SACD Ripper GUI の no-pad と比較
- [x] クリックが機器依存で、必発ではないことを確認
- [ ] PureDSD Batcher に DSF no-pad オプションを追加(既定オフ)
- [ ] オプションを入れた再抽出では、完了済みジョブを黙ってスキップしない
すでに出したファイルは自動では変わりません。クリックするアルバムは、オプションを入れて再実行してください。ISO 原盤を残しておけば、DSF はいつでも作り直せます。
⏳ 今クリックする場合
切り分けの短いリストです。
- [ ] 同じ DSF を別プレーヤーで鳴らしてもクリックするか
- [ ] 単曲再生か、アルバム通しのときだけか
- [ ] 各曲の両端か、曲と曲のつなぎが主か
- [ ] 曲間で DAC が一瞬 PCM に戻るか(別種のハード切り替え音)
使っているプレーヤーと DAC を書いてください。機種が分かれば、no-pad が効く連鎖か、DoP 欠落やリレー音と混ぜずに判断できます。
PureDSD Batcher の仕事は、一括抽出を安定させ、選択を手元に残すことです。既定はきれいで規格どおり。再生系が本当に必要なら、no-pad を入れてもう一度。
